はじめに
mp4動画を鑑賞していたときに、ふと思いました。
「今の時代だったら、フルHD動画を4Kにアップスケールしてリアルタイム再生することなんて、普通にできるんじゃないかな?」
少し調べてみると、やはりできそうでした。ただし、GPUは必要だと。
そういえば、寝室にRTX 3060を積んだPCが一台あったな——そう思い出しました。
そのPCでわざわざ動画を鑑賞するかどうかは別として、技術的好奇心から4Kアップスケール環境の構築と検証をしてみたくなりました。
結論から言えば、想像以上に綺麗でした。
今回は、その導入手順と躓きポイント、そして実際の検証結果をお伝えします。
検証環境
今回の検証に使用したPCスペックは以下の通りです:
| 項目 | スペック |
|---|---|
| GPU | NVIDIA GeForce RTX 3060 12GB |
| CPU | Intel Core i7(Sandy Bridge世代) |
| メモリ | 32GB |
| ディスプレイ | IOデータ製 4Kモニター |
| OS | Windows 11 |
決して最新のハイスペックマシンではありません。CPUに至ってはSandy Bridge世代という、かなり年季の入った構成です。
それでも、4Kアップスケール再生は快適に動作しました。
4Kアップスケール再生の方法
調べたところ、主に2つの方法があることがわかりました:
方法1:MPC-HC + madVR(今回採用)
動画プレイヤー「MPC-HC」に、高品質なビデオレンダラー「madVR」を組み合わせる方法です。madVRの「NGU(Neural Gradient Upscaling)」というアルゴリズムが、AIアップスケーラーの先駆けのような存在で、評価が高いとのこと。
方法2:NVIDIA RTX Video Super Resolution(VSR)
RTX 30/40シリーズで使える、ドライバレベルのAIアップスケーリング機能です。NVIDIAコントロールパネルで有効化するだけで使えるため、設定は簡単です。
今回はmadVRで検証しました。VSRについては、madVRで十分な効果を感じているため、試すかどうかは未定です。何かのきっかけがあれば試すかもしれません。
必要なツール
4Kアップスケール再生環境の構築に必要なツールは以下の3つです:
| ツール | 役割 | 入手先 |
|---|---|---|
| MPC-HC | 動画プレイヤー | https://github.com/clsid2/mpc-hc/releases |
| madVR | ビデオレンダラー(アップスケール担当) | https://forum.doom9.org/showthread.php?t=146228 |
| LAV Filters | デコーダー | https://github.com/Nevcairiel/LAVFilters/releases |
すべて無料です。
導入手順と躓きポイント
ここからが本題です。
実際に導入してみると、いくつかの躓きポイントがありました。同じことを試す方の参考になればと思い、詳しく記録しておきます。
躓きポイント1:MPC-HEじゃなくてMPC-HC
最初、「MPC-HE」だと思い込んでいました。
正解は MPC-HC(Media Player Classic - Home Cinema) です。
オーガニック検索では意外と見つけにくく、正しいダウンロード先は以下です:
https://github.com/clsid2/mpc-hc/releases
オリジナルのMPC-HCプロジェクトは2017年に開発終了していますが、clsid2氏がフォークして継続開発しています。こちらが実質的な「公式」と考えて問題ありません。
躓きポイント2:madVRの公式ダウンロード先
これが一番の罠でした。
madVRには公式サイトが存在しません。
検索すると怪しいミラーサイトばかり出てきますが、正しいダウンロード先は以下のフォーラムのみです:
https://forum.doom9.org/showthread.php?t=146228
この情報はRedditで見つけました。作者自身がフォーラムでしか配布していないという、珍しいパターンです。
躓きポイント3:madVRが外部フィルター一覧に出てこない
madVRを解凍し、install.batを管理者権限で実行しました。
Installation succeeded.
Please do not delete the madVR folder.
The installer has not copied the files anywhere.
成功メッセージは出ました。
しかし、MPC-HCの「外部フィルター」→「フィルターの追加」を開いても、一覧にmadVRが出てきません。
解決策:
外部フィルターに追加しなくても、以下の場所で直接選択できました:
オプション → 再生 → 出力 → DirectShowビデオ
ここのドロップダウンに「madVR」が出ていれば、それを選択するだけでOKです。
躓きポイント4:設定したのにアップスケールが効かない
madVRの設定画面で、NGU Anti-Aliasを「high」に設定しました。
しかし、Ctrl+Jでステータスを確認しても、アップスケールが効いている表示が出ません。
chroma > dxva
これでは単なるデフォルト設定のままです。
原因:ウィンドウモードで再生していた
フルスクリーンで再生しないと、4Kアップスケールは発動しません。
これは盲点でした。
ウィンドウモードだと、モニターの解像度まで拡大する必要がないため、アップスケール処理が行われないのです。
フルスクリーンにした瞬間、ステータス表示が変わりました:
scale: 1920 x 1080 -> 3840 x 2160
これで正常にFHD→4Kのアップスケールが効いていることが確認できました。
madVRの設定方法
導入できたら、madVRの設定を行います。
設定画面の開き方
動画を再生中に、MPC-HCのメニューから:
再生 → フィルター → madVR
これで設定画面が開きます。
RTX 3060向けおすすめ設定
左側のツリーから、以下を設定します:
scaling algorithms → chroma upscaling
- NGU Anti-Alias を選択
- 品質は「high」
scaling algorithms → image upscaling
- NGU Sharp または NGU Anti-Alias を選択
- 品質は「high」
scaling algorithms → image downscaling
- SSIM 1D (100%) を選択
RTX 3060 12GBであれば、high設定でも全く問題なく動作しました。カクつきは一切ありません。
もしカクつく場合は、品質を「medium」や「low」に下げてみてください。
動作確認
再生中に Ctrl+J を押すと、ステータスが表示されます。
確認すべきポイント:
- scale: 1920 x 1080 -> 3840 x 2160 のような表示があるか
- chroma や image の行に NGU と表示されているか
これらが確認できれば、アップスケールは正常に動作しています。
検証結果
導入にかかった時間
約1時間でした。
ただし、久しぶりに起動したマシンだったため、WiFi設定やシステム詳細設定をいじる時間も含まれています。躓かなければ、30分程度で完了するのではないかと思います。
画質評価
検証には、水着のグラビアアイドルが登場する動画を使用しました。
結論から言うと、想像以上に綺麗でした。
「これ、4Kですよ」と言われたら、疑ってみなければ納得してしまうレベルです。
もちろん、ネイティブ4K映像と並べて比較したわけではないので、厳密な評価はできていません。しかし、印象としては非常にシャープで、明らかにFHDそのままとは違う質感がありました。
具体的に感じた違い
特に印象的だったのは、俳優(グラビアアイドル)のファンデーションの粉感が認識できることでした。
肌のテクスチャ、ファンデーションの質感——これはまさに高解像度の恩恵がダイレクトに出る部分です。FHDだとそこまで潰れて見えないことが多いので、この差は明確でした。
逆に言えば、映画やドラマの制作側も、4K時代になってメイクや照明により気を使うようになっているのだと思います。
RTX 3060の実力
今回の検証で感じたのは、RTX 3060の十分な実力です。
NGU highという高品質設定でも、動きに全く問題がありませんでした。Sandy Bridge世代のCPUという古い構成でも、GPUがしっかり仕事をしてくれれば、4Kアップスケール再生は余裕でこなせます。
もちろん、より新しいRTX 4060やRTX 4070であれば、さらに余裕が出るでしょう。しかし、「手持ちのRTX 3060で十分なのか?」という疑問に対しては、十分ですと答えられます。
まとめ
今回やったこと
- MPC-HC + madVR + LAV Filters で4Kアップスケール再生環境を構築
- RTX 3060 12GB + 4Kディスプレイで検証
- NGU high設定でFHD→4Kアップスケールを確認
躓きポイントまとめ
| 躓きポイント | 解決策 |
|---|---|
| MPC-HEじゃなくてMPC-HC | GitHubのclsid2/mpc-hcが正解 |
| madVRの公式DL先がわからない | Doom9フォーラムが唯一の正規配布場所 |
| 外部フィルターに出てこない | 「出力」設定から直接選択できる |
| 設定したのに効かない | フルスクリーンで再生する必要あり |
結論
- 無料ツールだけで4Kアップスケール再生環境は構築できる
- RTX 3060でNGU high設定が快適に動作する
- 画質は「4Kですよ」と言われても納得するレベル
技術的好奇心から始めた検証でしたが、想像以上に実用的な結果となりました。
4Kディスプレイを持っているけど、手持ちのFHD動画を持て余している方には、試してみる価値があると思います。
おわりに
「今の時代ならできるんじゃないか」
そんな素朴な疑問から始まった今回の検証は、いくつかの躓きを経て、満足のいく結果にたどり着きました。
最新のハイエンドGPUでなくても、RTX 3060があれば十分に高品質な4Kアップスケール再生が楽しめます。しかも、使用するツールはすべて無料です。
PC環境の最適化やこうした検証・導入のサポートについても承っております。
「自分でやるのは不安」「設定がうまくいかない」といったお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。